【こねずみ物語 第四話 太陽の言葉】
「あいさつのまち」
こねずみは、挨拶の街にたどり着きました。
街を歩くと、ぞうさんも、ねこさんも、アルマジロさんも挨拶をしています。こんにちは。さようなら。
こねずみは思いました。この街は、みんなお互いに、仲良くあいさつできて素敵だな。僕もあいさつをしよう。
すると、むこうからライオンさんがやってきたので、挨拶をしました。こんにちは。
こねずみがあいさつをしたのは、ライオン博士でした。
ライオン博士は、こねずみに、こんにちはと応えてくれました。そして、言いました。こねずみくん。街ではあいさつが行き交っているけど、さようならの意味を知っているかな?少し、考えてみなさい。
こねずみは考えました。しかし、わかりません。そこで、辞書で調べることにしました。
辞書には、こう書いてあります。さようならの意味は、それならば、そうであるならば。
こねずみは思いました。なぜ、人は別れる時に、さようなら(そうであるならば)とあいさつをして、別れるのだろう?
「日本人のこころ」
ライオン博士は、さらに、こねずみに言いました。日本人とは?と聞かれたら、何と答えるかな?
例えば、もし、あなたがイギリス人にイギリス人とは?と聞いたら、ジェントルマンシップを持っていること。ドイツ人であれば、ジャーマンスピリットを持っていることと答えるよ。
こねずみは、わかりませんでした。そして、いったい、日本人とは何だろう?と考えました。
「太陽電池」
ライオン博士は、こねずみに言いました。難しかったかな?わからないなら教えてあげよう。こねずみくん、あなたは今、生きていますね。生きるとは、いき(呼吸)が(続いてい)ること。そして、その呼吸を繰り返す力の源は心臓。実は、その心臓を動かしているエネルギーのひとつが太陽エネルギーという研究がある。つまり、心臓が太陽電池のような役割もしているらしいのだ。まさに人体の神秘。
そして、太陽に生かされていることを感じ、その恵みに感謝して、太陽さんのように丸く明るく元気に豊かに生きる。その精神をもって生きてきたのが、日本人なのだ。
「おかみさん」
ライオン博士は、こねずみに言いました。こねずみよ。お母さんがそばにいると、いつも明るくて暖かいよね。まるで太陽のような存在。
それで、お父さんはお母さんのことを、かみ(日身)さんと呼ぶようになったんだよ。かは太陽、みは身体。つまり、太陽の身体という意味。
江戸時代では、かかあ、かかさま、おかあさんと呼んでいました。かは、太陽の意味なんだ。ちなみに、お父(とう)さんのとうは、尊いという意味だよ。
「太陽の言葉」
ライオン博士は、こねずみに言いました。それでは、最初の話に戻すとしましょう。
こんにちは、さようならという挨拶の言葉。もともと江戸時代までは、こんにちは、お元気ですか?というのが、挨拶の言葉でした。
今でも、地方では太陽のことを、こんにちさまと呼んでいる人がいますが、こんにちはという言葉は、昔は太陽という意味でした。
つまり、こんにちはの意味は、あなたは太陽のエネルギーのおかげで生きているという事を知って、太陽さんのように明るく元気に生きていますか?という確認のあいさつで使われていたのです。
例えば、当時はこんな感じの挨拶になっていたと思います。こんにちは、お元気ですか?と挨拶して、相手は、はい、元気ですと答えます。そして、さようならば、ごきげんよう(そうであるならば、ご機嫌もよいでしょう)と再度挨拶。
こねずみは、ライオン博士に言いました。さようならが、なんで、そうであるならばという意味なのかが、やっとわかりました。今の日本語では省略されて、もともとの意味が分からなくなっていたのですね。これからは、その事も含めて挨拶していこうと思います。
「感謝を知り旅立つ」
こねずみは、ライオン博士に言いました。太陽に感謝して生きることは素敵ですね。博士、素敵なことを教えてくれてありがとう。これから、挨拶することが楽しくなりました。ライオン博士、こんにちは、お元気ですか?
ライオン博士は応えました。元気ですよ。
こねずみは応えました。さようならば、ごきげんよう。また会いましょう。
こうして、こねずみは新しい世界をみつけるために旅立ちました。
(参考文献)日本のこころの教育(境野勝悟)